2011/04/24

宮崎駿 「シュナの旅」

シュナの旅 (アニメージュ文庫 (B‐001))

風の谷のナウシカ、もののけ姫の原点
 チベットの民話「犬になった王子」を元に、宮崎駿が独自のキャラクターで描いた絵物語。単純に言えば、風の谷に住むアシタカが金色の穀物を求めてヤックルに乗って旅に出る話で、服装を始め、銃器や町並みなどの造形はマンガ版のナウシカとそっくりである。ほとんど吹き出しが無く、画とテキストで構成されている。


ナウシカのしおりが付属していた

完成されていると考えるか、進歩がないと考えるか
 83年に初版発行と古い作品だが、驚くほどその後の宮崎アニメのエッセンスを含んでいる。風の谷のナウシカを彷彿とさせる造形や、もののけ姫のヤックルが出てくる点(走らせすぎて降りるシーンまである)などは直接的で分かりやすいし、やたらしっかりした女の子が出てくるプロットや、アクションシーンの演出(暗闇の中で発砲した際の影の付け方など)も宮崎アニメそのものである。千と千尋の神隠し以降はやや毛色が変わっているので当てはまらないが、少なくとも、もののけ姫までの作品で使われた表現スタイルはこの時点で確立されていたのだと感心する。 
 一方で、83年からあまり進歩していない、という見方もできるかもしれない。世界観は特にそう思える。ナウシカで出てきた腐海の底の雰囲気や、もののけ姫のシシ神の森の雰囲気は、本書での神人の地の雰囲気と同じである。出てくるタイミングも似通っている。つまり、みんな神秘的な場所がどこかにあって、雰囲気や位置づけが同じなのだ。その点は、もう少し別な発想が後々の作品には登場してもよかったのでは、と少し残念に思う部分だ。もっとも、そうであっても、歴代の宮崎アニメが圧倒的に面白かったことに変わりはないのですが。

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