2013/02/17

出雲充 「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。」



 2012年12月20日東証マザーズに上場したユーグレナ。本書は、その創業者社長である出雲充氏が、子供時代から現在までを振り返った一冊である。ユーグレナはミドリムシの学名で、その名前を冠した企業であるユーグレナは世界で初めてミドリムシの大量培養に成功した企業だ。

 そもそも何のためにミドリムシを培養しているのか。同社の現在の主力商品はサプリメントだが、ゆくゆくは世界の食糧問題を解決するためである。出雲氏は学生時代にグラミン銀行のインターンとしてバングラディシュを訪れたことがある。そこで栄養不足に苦しむ子供たちを目にすることになる。しかし意外なことに、現地には米や小麦など炭水化物は十分にあった。不足しているのが何だったのかと言えば、ビタミンやミネラルだったのだ。そこで目をつけたのがミドリムシである。ご存知のようにミドリムシは動物プランクトンでありながら葉緑体を持ち、植物プランクトンのように光合成も行うことができる。これは動物性、植物性両方の栄養素を作れることを意味し、実は非常に栄養価の高いプランクトンなのだ。

 しかし栄養価が高すぎるがゆえに、ミドリムシの培養は非常に困難な課題だった。というのもミドリムシは食物連鎖の最底辺に位置し、しかも栄養価が高いということで簡単に捕食されてしまうのだ。培養プールにバクテリアが少し紛れ込んだだけでも、瞬く間にミドリムシを食い散らかし、バクテリアだらけのプールになってしまうという。しかし、ユーグレナはこの問題を解決して世界で初めて大量培養に成功したのだ。

 本書にはキーパーソンとして意外な人物が登場する。ご存知ホリエモンと元日本マイクロソフト社長の成毛眞氏だ。いずれも出資者だ。たまたまでホリエモンと会食で一緒になった出雲氏は「君は何をやろうと思ってんの?」話しを向けられミドリムシの話をする。ホリエモンは「宇宙食にいいね」とミドリムシ可能性を認め、ライブドアファイナンスのバイオベンチャー投資第一号として出資を決める。ライブドア・ショック後、倒産しそうになった時には成毛さんが登場。「堀江さん以外の人で、ミドリムシの持つ可能性を一瞬で理解した人に出会ったのは初めてだった。」と東大卒の出雲氏も驚く洞察力で投資を決め、人材まで派遣してくれる。2人に共通するのは最初の説明でミドリムシの可能性を理解し、次に会った時には、より専門的な知識を身につけていたと言う点。まとまったお金で投資をする人とはこういう人なのか、と感嘆せざるを得ない。

 食品に続く可能性としてエネルギー分野への進出も公言している。個人的には、ポイントとなるのは生成スピードなのだろうなと思っている。つまるところ太陽エネルギーを如何にして保存するかという話であるため、太陽電池や風力発電+バッテリーというソリューションに対して競争力のあるスピードが無ければ選ばれないためだ。そういう意味で、電化が遠そうなジェット燃料に狙いを定めているところは妥当な選択だと思う。個人的にはIPOに漏れてしまって残念だったのだが、今後もウォッチして行きたい企業である。