現役選手が観察する日本代表
伊藤洋一さんのブログでの紹介を見て、面白そうだったのですかさず購入。かなり面白く、一気に読んでしまった。「ヤット(遠藤の愛称)さんの代わりはいない」と言われるサッカー日本代表不動のボランチ、遠藤保仁は日本代表をどう見てきたのか?南アフリカW杯から2010年のザックJAPANまでの出来事を中心に、事実関係やそれについての自身の考えを時系列で振り返えっている。冷静な目線からの観察は、さながらドキュメンタリーかルポタージュのようで迫力がある。伊藤さんも指摘するように「俊輔を外す」と岡田監督が告げるシーンからの始まりはドキドキする。目次は以下の通り。
序章 第一章 南アフリカ・ワールドカップの真実 第二章 信頼の力 監督とチームの関係 第三章 今の日本サッカーに不足しているもの 第四章 ザッケローニ・ジャパンへ おわりに |
歴代監督評も面白い
岡田〜ザック時代の話だけでなく、遠藤が経験した4人の代表監督(トルシエ、ジーコ、オシム、岡田)についての評価も面白い。主に人物評が多いが、飄々とした遠藤のキャラクターはファイトを求めるトルシエとは全く合わなかったようだ。この部分は、現役選手の割にはかなり本音を書いている部分で、はっきりと感じた不満を書いてある。対比して岡田監督とはやりやすかったようだ。素人の勝手な印象で言えば、岡田監督はよく考えているし、決断もできる人だ。一方で、インタビュー記事や映像を見ていると、その考えを哲学的に表現するので、せっかく深い考えがあっても、選手に通じないんじゃないか、と思う人でもあった。その点、遠藤はよく物事を考えるプレイヤーだということもあって、ウマがあったのかもしれない。
意義を見いだすことが成長への一歩
遠藤自身の成長も綴られている。代表監督がオシムになった当初、遠藤はオシムのサッカーが好きではなかった。「ひたすら走って頑張る」という印象だったからだ。しかし、単に運動量を増やせというワケではないこと、本当の「走り」は何かということを学んで「まさに目から鱗だった」と振り返っている。そして、今では、
無駄走りは嫌だけど、ここで走れば何かが代わるー。 そう、思えば走れるもの。 |
p145 |
と考え、前線への走りを重視している。これを見て、夏石鈴子さんの小説、「いらっしゃいませ」を思い出した。受付嬢である主人公が、変わり映えしない、日々の仕事に悩んだ時、ふとしたことから意義を見つけるシーンがある。
木島さんを困らせないように働く。そう決めたから、八月から後は、全てがクリアだった。 (中略) 前を向いて坐っていさえすれば、木島さんは安心してくれるのだ。そう思えばなんでもなかった。 |
p169 |
どちらも、それまで意義を感じていなかったことに、新しく意義を見いだしたことで一段階成長した例だと思う。我々の目の前で日々起こっていることは、必ずしも誰かが意図を持って、意義付けをして起こしているのではない。しかし、自分なりの意義を見いだすことができれば、つまらないと思っていたことからも次の世界が開けるかも知れないのだ。ヘンなところで勉強になった一冊だった。
Amazon >>
楽天ブックス >>
0 件のコメント:
コメントを投稿