2010/08/29

中村繁夫 「レアメタル超入門 現代の山師が挑む魑魅魍魎の世界」

レアメタル超入門 (幻冬舎新書)


レアメタルではなくレアメタル市場の本
レアメタル超入門というタイトルの本書だが、鉱物学的な解説の本ではない。むしろレアメタル“市場”について解説する本だ。それもそのはず、著者の中村氏は現役のレアメタル専門商社の社長なのである。中村氏は大学院卒業後35カ国を放浪した後、専門商社の蝶理に入り、その後MBOで独立したという異色の人物だ。その経歴については「放浪ニートが、340億社長になった!」が詳しい。

本書の目次は下記の通り。
序章 金融危機で露見した脆弱な世界
第一章 資源ナショナリズムに飲み込まれる日本
第二章 天才トレーダーが闊歩するレアメタル業界の特異性
第三章 日本の先進環境技術はサバイバル戦略の切り札か
終章 資源プラネティストが未来を語る

魑魅魍魎の世界
今やハイテク産業には欠かせない素材となっているレアメタル。著者の挑むその市場は文字通り「魑魅魍魎の世界」だ。レアメタルの主な産出国は中国とロシアそして南米であり、反米の国が多い。また、中国はアフリカでも多くのレアメタル権益を獲得している。こうした国々が、高まる資源ナショナリズムに乗って自国の利益確保のため、あの手この手を尽くしてくる世界なのだ。ロシアでは、著者の関わった取引で謎の死が相次いだこともあったとのこと。

取引に参加するトレーダーも一筋縄ではいかない者揃いだ。アングロサクソン系とユダヤ系のトレーダーが多いとのことだが、やはり強いのはユダヤ系。著者は商売センスに長けていると評している。商売センスに長けた民族といえば中国系が思い浮かぶ。現在は産出国として非鉄メジャーとやり合う立場だが、そのうちトレーディングの世界でもユダヤ系VS中国系争いになるのだろうか。また、「レア」メタルだけに市場規模はそれほど大きくなく、価格操作もザラにある世界のようだ。金属ごとに癖のある相場形成をするらしく、人によって合う金属、合わない金属があるという話は面白い。

日本はどうか
「魑魅魍魎の世界」から資源を買っている日本はどうか?実は新興国の成長によって値上がりが起きるまで、企業も政府もそれほど危機感は無かったようだ。一部には未だに「買ってやっている」という意識も残っていたとのこと。しかし、これからはそうはいかない。戦略的な資源外交を行って、資源を獲得せねばメイドインジャパンの製品を作ることすらできなくなってしまう。著者は日本の生き残る道として、強みである省エネ技術、エコリサイクル技術などの技術開発に注力し、作り上げた循環型システムを国境を越えて資源国家と共有し、資源国家に貢献することで資源を確保することを提案している。

現場の人間が書いているだけあって、とても臨場感と迫力のある内容だった。よく、当たり前だと思っていたことが、当たり前ではなかったことに気づく瞬間があるが、レアメタルも然り。携帯電話にレアメタルが使えるのは、魑魅魍魎たちが命がけで鉱山から買ってきてくれるからなのである。

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