「社会運動はどうやって起こすか」の具体例?
全国的にタイガーマスク運動が流行っている。中には愉快犯的な人もいて、この流れ自体には賛否両論あるが、寄付文化の育っていない日本において、恵まれない子供たちにへの善意に、スポットライトがあたったこと自体は悪いことではないだろう。できれば一過性の祭りに終わらず、全国民的に寄付文化を考えるきっかけになればよいと思う。
さて、このタイガーマスク運動について、会社の後輩と話した時に「これは、TEDカンファレンスにあった“社会運動の起こし方”の具体例ですよね」という話になった。話の元になったTEDカンファレンスの動画は以下のもの。
タイガーマスク運動を検証してみる
上の動画では、ある社会運動が起きるとき、重要なのはリーダーに続く最初のフォロワーだとしている。確かにリーダーには功績があるが、フォロワーが無ければただのバカであり、最初のフォロワーがバカをリーダーに変える。みんながリーダーを目指すのではなく、最初のフォロワーになる勇気を持つことも必要だというわけだ。
さて、実際にその主張に沿ってタイガーマスク運動を検証してみたい。まず、最初に必要なのは「リーダーが勇気をもって立ち上がり、嘲笑される」ことだ。Googleニュース検索で調べたところ、最初の伊達直人は12月25日に群馬県に現れた伊達直人のようだ。彼は、もちろん嘲笑されてはいないし、立派な方だろうと思うが、この時点では年末のほっこり面白ニュースの域を出ていない。
次に「ここで最初のフォロワーが重要な役割を担っています。みんなにどう従えばいいのか示すのです。」という点が指摘されている。今回のタイガーマスク運動で、最初のフォロワーは1月1日に小田原に現れた伊達直人だ。彼はフォローの仕方、つまり、単純に寄付を真似るのではなく、伊達直人名で寄付をすることを示した。TEDでは「最初のフォロワーというのは、過小評価されているが、実はリーダシップの一形態」と指摘している。また「最初のフォロワーの存在が1人のバカをリーダーへ変える」とも言っている。
そして2人目。2人目のフォロワーは1月6日に静岡に現れた伊達直人だ。TEDでは「3人は集団であり、集団はニュースになる。だから運動が公のものとなる<」と指摘している。そして実際、これを機に「リーダーではなく、フォロワーを真似」た新たなフォロワーが続々登場しはじめる。Googleニュース検索で「伊達直人」のニュースを期間を区切って見ていくと1月7日以降、急激に件数が増加していることが分かる。つまり「臨界点に達し1つの運動になった」瞬間だったのだ。見事なまでに、TEDカンファレンスの通りに展開していることが分かる。
2011年1月7日までの「伊達直人」ニュース 37件
2011年1月8日までの「伊達直人」ニュース 1710件
勝因は「伊達直人」をフォローしたこと
さて、このタイガーマスク運動が全国的に広がることとなった最大の要因はどこにあるだろう?TEDに従えば、言うまでもなく最初のフォロワーだ。しかし、単純にフォローするだけで良かったのかというと、そうではないと思う。TEDでも最初のフォロワーについて「フォローの仕方を示す重要な役割」と言っているように、リーダーのどの点を真似るかという所が重要だったと思う。そういう意味で、今回は「伊達直人」を真似たところが最大の要因だったのではないだろうか。
これは、モノマネ名人の行う有名人のモノマネ似ている。モノマネの完成度は、つまるところ真似る対象のデフォルメの精度にかかっていて、巧いデフォルメは一般人にも真似(フォロー)される。そして、この時、一般人は有名人本人ではなくモノマネ名人のほうを真似ている。これは「新たなフォロワーがリーダーではなく最初のフォロワーを真似る」という指摘と同じである。今回は「伊達直人」に重点を置いてデフォルメしたことがウケて、多くのモノマネが続いたというわけだ。
フォロワーが出現しなかった伊達直人の例
ちなみに、私の尊敬する漫画家の島本和彦センセイが、かつてラジオ番組「島本和彦のマンガチックにいこう!」の第45回(タイガーマスクを取り上げた回)で、「伊達直人から受け取ったものを具現化してるか!?感動は形にしたときに始めて次の世代へ受け継がれていくんだよ!」と熱く語っていたことがある。
とても良いことを言っているのだが、残念ながらフォロワーは続かなかったようで、社会運動には発展しなかった。こちらは失敗した例ということで・・・。
島本センセイ、その節はフォローできなくてスミマセンでした。
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