2011/01/10

成毛眞 「本は10冊同時に読め!」

本は10冊同時に読め!―本を読まない人はサルである!生き方に差がつく「超並列」読書術 (知的生きかた文庫)

ドS多読本
 本書は、本人も大変な読書家で知られる、元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞氏による、いわゆる多読本だ。目次は以下の通り。

はじめに - 人生に効く「超並列」読書術
第1章 仕事も生活も劇的に変わる! 「速読」かつ「多読」の読書術
第2章 一生を楽しみつくす読書術 人生は、読書でもっともっと面白くなる!
第3章 「人生を楽しむ力」と「読書量」 忙しい人ほど本を読んでいる!
第4章 まずは「同時に3冊」から! 実践!「超並列」読書術
第5章 「理屈抜きで楽しめる」読書案内 私はこんな本を読んできた!
おわりに - 本は「人生を楽しむ」知恵の宝庫である!

同じく多読を薦めている、小飼弾氏や勝間和代氏の意見と共通する部分も多いのだが、決定的に違うのは、「だからお前はアホなのだ!」とばかりに様々な方面から「庶民」を責め立てる、ドSの文章だ。以下にいくつか例を挙げる。

たとえば「趣味は読書。最近読んだ本はハリポタ、セカチュー」という人は、救いようのない低俗な人である。
p4

本を読んでいない人間の話題は、スポーツの話、テレビの話、飲み屋の話、女性の話、金儲けの話が中心である。ユーモアがわからず、駄洒落をいえばいいと思っているような低俗な輩である。
p39

月に数冊ベストセラーを読む、というパターンがいちばん質が悪い。みんなが読んでいる本を追いかけるようにして読んで、その本の価値観や思想を鵜呑みし、それをさも自分が考えたことのように錯覚している人は、一生「庶民」からは抜け出せないだろう。
p70

新宿のサザンテラスにあるドーナツ屋はなんと2時間待ちだという。1個150円のドーナツのためにアホ面をさらしてそこまで待てる神経が信じられない。日本人は、みんな暇なのだろうか。
p87

全編がこの調子である。この切って捨てるような文章(論理的な意見も多いが、感情的な意見も混じっている)は好き嫌いが分かれそうだが、私自身は、意見の合うところが多い点、文章そのものが小気味よい点から心地よく読めた。というか、休むことなく一気に読んでしまった。

他の多読本と共通する点/しない点
 本書の主張自体はいたってシンプルで、「庶民」を脱出したければ本を読め、ということだ。すき間時間を活用して本を読む。1つの本を精読するのではなく、浴びるように様々な本を読む。読み始めた本でも、全部読む必要はない。読書メモはとらない。このあたりは、他の多読本でもよく出てくる内容だろう。
 一方、並列で10冊読むことの効能についての主張は独特である。仮に1冊の本のみを読むとすると、面白くない部分で集中力が落ち、惰性で読んでしまう。一方、並列読書の場合は、どれかの本が面白い部分に差し掛かっているため、集中力を保ったまま読むことができるというのだ。これは以下のように例えられている。

つねにいずれかの本はクライマックスを迎えているようにすれば、読書習慣が途絶えることはないだろう。それはたとえば、漫画雑誌が連載中の作品のクライマックスをずらすことによって定期購読を促しているのと同じである。
p29

読んできた本の紹介
 第5章では成毛氏が読んできた書籍の紹介もある。人生のいくつかのステージ別に整理されているので、参考にしやすいだろう。ここでも上述したような成毛節は健在だ。文豪の作品は人生の役に立たないと切って捨てている。また、マイクロソフト日本法人の社長に就任した時に、前経営陣のクビを切ったのは、直前に読んでいたマキャベリの「君主論」を忠実に実行したことによるとのことだ。
 このようなエピソードを読む限り、成毛氏はかなり「ぶっ飛んだ」人物だ。従って、本書のような読書法は誰にでも真似できるものではないかもしれない。しかし、このような「ぶっ飛んだ」人物の考え方を知るだけでも、十分に楽しめる一冊だと思う。

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