2022/12/27

サバイバル登山家:服部文祥氏が「登山者のハートをストレートに表現している、良くできている」と評する山岳マンガ2選

 

アジア人初のピオレドール生涯功労賞を受賞した登山家の山野井泰史氏。その歩みが今年「人生クライマー」という映画になり、その公開を記念してご本人も登場するトークライブが配信された。


その中で山岳映画の話が出た折、スペシャルゲストとして出演のサバイバル登山家、服部文祥氏が「ノンフィクション(映画)には面白いものがあるが、フィクションになると山を舞台にした〇〇(例えば恋愛映画など)になりがち。」「一方、マンガには登山者のハートをストレートに表現しているものがある。」という趣旨のことを仰っていた。

そこで「登山者のハートをストレートに表現している」作品として紹介されていたのが塀内夏子の「おれたちの頂」と村上もとかの「岳人(クライマー)列伝」である。どちらも知らない作品だったが言葉巧みな服部氏の説明に大いに興味が湧いたので早速購入してみた。

おれたちの頂


優等生タイプの邦彦と勝ち気な性格の恭介が15歳で出会い、成長しながらコンビを組んでヒマラヤの高峰に挑む青春山岳マンガである。何せ40年近く前のマンガなので画のスタイルは時代を感じるが、作者の塀内さんが山岳部の出身ということもあって登山の描写は本格的。

コミカルなところはコミカルに。しかし登山部分の描写には相当な迫力がある。また、冗長になり過ぎない適度な説明が入り山の知識がない人でも問題なく楽しめる。

話の構成もよくできており、2人が出会って成長し、途中山を辞めようかという危機もありつつ、老害に邪魔されながらも理解者の大人に導かれて世界的なクライミングに挑むようになるという、少年マンガの王道と緻密な山岳描写の絶妙なコンビネーションになっている。これが文庫本1冊になっているので内容は相当濃く、コンパクトにまとまった傑作だと思った。マガジンコミックスで絶版の後、山と渓谷社からこの復刻版が出たというのも頷ける作品である。

岳人(クライマー)列伝



「六三四の剣」や「JIN-仁-」で有名な村上もとかによる山岳マンガ短編集である。基本的に1話完結でそれぞれの話は独立しているが、アン・プルバというシェルパだけはヒマラヤのエピソードに共通して登場する(年齢はバラバラ)。「おれたちの頂」がいかにも昭和のサンデー、マガジンな画だったのに対し、こちらはいかにもビッグコミックスな画だという印象。

まったく登山経験がないところから始めたという村上氏だが、さすがのリサーチ力で、全く違和感のない描写に仕上げている(とは言っても読んでる私も素人ですが)。それぞれのエピソードは極限状態になった時に表れる人間(登山家)の本質みたいなものの描写に力を入れている印象で総じてアツい心情が伝わってくる。それゆえにエピソード内死亡率も大変高い…。

フィクションでありながらこれだけ濃い内容の1話完結エピソードを量産できるあたり、ヒット作を続けて出せる漫画家の創作力のすごさを改めて感じる1冊だった。


おれたちの頂復刻版

塀内夏子 山と渓谷社 2014年05月
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岳人列伝

村上 もとか 小学館 2011年05月14日
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山野井さんの軌跡は映画だけでなく、クロニクルとして書籍にもまとめられている。
CHRONICLE 山野井泰史 全記録

山と溪谷社 2022年07月13日
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もうひとつ、夢枕獏の小説を谷口ジローが漫画化した「神々の山嶺」も好きだ。国内でもフランスでも映画化されている。
神々の山嶺(いただき)(1)

夢枕獏/谷口ジロー 集英社 2006年10月
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2022/12/23

GENTOSのLEDヘッドライト、CP-195DBの電池蓋割れを修理する

 


修理するとは言っても実態は部品交換です。

キャンプ用にGENTOSのLEDヘッドライト、CP-195DBを使っている。機能、性能的には特に不満はなく何より安価な点が良い。ただ、買ったのは5月なので大した期間使っていないのに急にライトが切れる症状が出始めた。おかしいなと思って確認してみると、電池蓋が割れていた。

クラックの入った電池蓋

電池蓋は、電池を持ち上げるバネ状の電極を外から押さえることで通電を確保しているが、クラックが入って蓋が浮いてしまうことで通電が不安定になり急に切れる症状が出ているようであった。

蓋が本体に密着せずちょっと右に浮いているの図

ダクトテープなどで修復を試みたが、症状は改善するものの切れる頻度が下がる程度で解決には至らず。次に蓋だけ販売していないものかとGENTOSのお問合せフォームから問い合わせたところ、蓋だけで販売しているとのこと。

部品型番:CVCP-195DB

品名:CP-195DB用電池蓋

部品価格:440円(税込)

型番を指定し家電量販店で取り寄せて欲しいとの案内を頂き、近所のケーズデンキから発注。1週間ほどで入荷の連絡があり店舗に伺って購入。

単品売りのCP-195DB用電池蓋

本体に装着して修理完了。無事問題は解決した。

クラックの無い電池蓋
正直、安い製品だし細かすぎる部品だしで単品売りは無いだろうと思っていたが、ちゃんと対応されていて良い意味で驚いた。まだまだキャンプで活用していきたいと思う。
by カエレバ

2022/12/21

Adobe Creative Cloudデスクトップアプリからログアウトできない時の対処法

結論を最初に言うと、Creative Cloudアプリではなくまず個別のアプリからログアウトをすることでCreative Cloudアプリでもログアウトできるようになった。

以下、経緯。

職場のPCにはAdobe Creative Cloudが入っているのだが、気がついたらコンプリートプランを契約しているはずのライセンスが無くなっていた。思い当たる節はあって、数日前にAcrobat Proを開いた際に何故か再ログインを求められた。長らくログイン作業をしていなかったので、その時に誤ったアカウント情報を入れてしまったようだ。

現在のCreative Cloudは会社がボリュームライセンスで契約しており、Office365のアカウントでログインする。しかし、昨年までは個別ライセンスだったため個人のAdobeアカウントでログインしていた。どうも誤って個人のAdobeアカウントを入力してしまっていたようだ。

誤ったアカウントではライセンスは切れているため、Photoshopなどのアップデートができない。これは元に戻さねばということでCreative Cloudのデスクトップアプリからログアウトしようとしたが、ログアウトボタンがグレーアウトしていてクリックできない。他にログアウト用のUIは無いかと半時間ほど悩んだが発見できず。

ここでふとAcrobat Proを使った際にアカウント入力を求められたことを思い出し、Acrobat Proを起動。Acrobatではログアウトボタンが有効だったのでここでログアウト。その後Creative Cloudアプリに戻るとログアウトボタンは有効になっていた。

これでログアウトしOffice365のアカウントで再ログインすることで問題は解消された。というわけで、Creative Cloudアプリからログアウトできなくなったらまず個別アプリでのログイン状況をチェックしてみましょう、という話でした。

2022/12/01

良品計画(7453)がいつの間にか株主優待を設定していた

 


ご存知無印良品を運営する良品計画(7453)は少なくとも自分が知っている範囲では株主優待を設定していなかった。今Yahoo!ファイナンスなどを見ても優待は無いと記載されているし、良品計画のIR情報にも同様である。

しかし、先日、上の画像のようなシェアホルダーカードなるものが送られてきた。これを提示すると5%割引きになるとのこと。有人レジのみでセルフレジやネットストアは対象外。いかにも低コストで導入した制度な香りがするが、株主かつ近所に店舗がある人間としてはありがたい限りである。株価はお手頃価格なので、優待好きの方は購入を検討してみてはいかがでしょう。続くかどうか分かりませんが。

2022/09/14

karahi curryでスパイスチキンカレーを食べた

 先日、京都に旅行した際karahi curry(カラヒカレー)に行ってきた。以前、市川渚さんのVLOGに出てきたのを観て行ってみたいと思っていたところ。

四条河原町の高島屋裏の雑居ビル2Fにあり、入り口は分かりづらかった。Googleマップさんありがとう。

 
2Fの緑の看板がkarahi curry。


11:30が開店時間だったのでぴったりに来店したが、まだ準備中とのことで10分ほど待機してから入店。カウンター7席のみ、マスターが1人で切り盛りしているこじんまりとしたお店。まずは趣のある瓶に入ったお冷がサーブされる。

メニューはシンプルにカレー(800円)のみ。それにチャイ(400円)やビール(550円)もある。カレーとチャイのセットは(1,000円)。これがテッパンオーダーかなと思ってセットを注文。

店内はコンロが2つしかなく、1人分ずつ丁寧に温めていくスタイルのため同時には2人分しか調理できない。友人と3人連れで行ったため、2回に分けて作りますとの説明が最初に入った。調理時間ははっきり測っていないが10分程度かと思う。結構丁寧に調理していた印象である。

カレーソースと鶏肉、じゃがいもを温め直してご飯の上にかけ、キャベツの酢漬け的な何かを添えて完成。


味は大変美味しい。スパイスの風味と旨味がしっかり出ているが、良い意味でパンチの効きすぎない素朴な美味しさ。激辛だったり濃厚だったりでパンチを効かせたカレーも美味しいが、karahi curryの美味さは繰り返し食べられる奇をてらわない美味しさだと思う。日本人好みのスパイスカレーだ。

そうこうしているうちにスプーンは進み、2ターン目のカレーができあがるまえにペロリと食べ終えてしまった。紅茶味よりミルクの濃厚さが目立つチャイを飲みながら落ち着いていたら、同じく1ターン目だった友人も「近くに住んでたら確実に通う美味さだ」と激賞していた。次、京都に来た時もまた食べに来たい。


カラヒカレー
京都市下京区四条寺町下がる貞安前之町619朝日ビル2F東

2022/08/12

壊れた万年筆のキャップを修理に出した

長らく使っているペリカンの万年筆、トラディショナル M200のペン先が妙に乾くなと思っていたら、ある日突然キャップのヘッド部分がボロリと取れた。

ヘッド部分が取れて穴が空いたキャップ

元々はペリカンマークの付いたヘッドで埋まっていた

キャップだけ売っていないかと探したものの発見できず、ペリカン日本にメールで問い合わせたところ、対応は可能だがすべて代理店経由としているのでまずは販売店にコンタクトして欲しいとのこと。

15年ほど前の購入後、販売店は既に廃業していたため、ダメ元で「世界の筆記具 ペンハウス」に扱ってもらえるかメールで問い合わせ。取り扱いは可能で一度状態を確認してからの対応となるため、まず実物を送って欲しいとの返答を頂いた。

早速梱包して送付。すぐにメーカー手配した旨の連絡。ここからがやや長く、10日ほどして見積もりの返信があり即日振り込み、そこからさらに17日ほどしてようやく発送したとの連絡あり。ドイツまで送っていたのだろうか。

果たしてM200は帰ってきた。

お手紙はペリカンではなくペンハウスから

ペリカンの万年筆だがプラチナの箱に入って

ヘッド部分復活

キャップは新品になったのではなく修理されており、ゆえにヘッド部分以外の経年変化や傷みはそのまま。ちなみに送料、手数料入れて¥7,040。たかだかキャップにこの値段かーと思いながら振込んだが、手作業で修理するならそんなものかなという気がしてきた。

また、キャップが死んでインクが乾き、ガビガビになっていたであろうペン先やタンクはきれいに洗浄されており、丁寧な仕事がうかがわれた。決して安くはないが、妥当な額かな思う。

なんでキャップのヘッド部分というそれほど負荷はかからなさそうなところが壊れたのかは分からないものの、キャップだけ壊れても修理は可能ですよということが共有できれば幸いである。では、良い万年筆ライフを。



トラディショナル M200は現行ではクラシック M200という名前になっています。ペリカンのエントリーモデルに当たります。
by カエレバ

2022/06/19

ベテラン山小屋バイトのイラストエッセイ / やまとけいこ「黒部源流山小屋暮らし」を読んだ

何か目ぼしいアウトドア飯の本がないかと図書館をブラブラしていてたまたま発見したのがこの本、「黒部源流山小屋暮らし」。 表紙のイラストが良かったので思わず借りたのだが、内容も面白くて一気読みしてしまった。 

 著者のやまとけいこ氏は出版時点で薬師沢小屋通算12シーズン勤務のベテランアルバイト。 普段は山や旅のイラストレーターとして活躍されているとのこと。学生時代はワンゲル部に所属していたという筋金入りの山屋がそのまま山関係の仕事をしている形だ。

個人的にはこの手の本は初心者バイトによるびっくり日記や山小屋経営者(それこそ「黒部の山賊」の伊藤正一さんのような)によるものが多いイメージだが、 本書はベテランバイトというどちらでもない立場からのもので新鮮。 

内容は、小屋開けからハイシーズンを経て小屋閉めに至る1シーズンを時系列で追いながら、その間で起きる出来事を過去の話も含めた紹介がメイン。 途中、山小屋の法的な位置づけや、遭難時の対応、著者が大好きなテンカラ釣りなど周辺環境の紹介も入ってくる。前述の通り、ベテランのアルバイトであるため非常の落ち着いた、時に達観した目線での書き口になっていてとても読み心地が良い。

しかし、環境はなかなか過酷。山小屋スタッフの個人スペースは1と1/3畳。 一度山に入ったら小屋閉めまで降りないため途中で衣類が破損すると悲惨なことになる。 動物や自然との共存も大変。ヤマネがヨーグルトに落ちて溺れていたみたいなコミカルな話もあれば ツキノワグマに小屋の中に侵入されたというシビアな話もある。 薬師沢小屋は谷底にあるため、気軽に渓に降りていると鉄砲水で死にそうになることもある。 

こうしたエピソードを、ふんだんに盛り込まれるイラストや写真で紹介してくれるのだが、イラストがとても良い。 すっきりした画風は個人的には大変好みで、画としても見ていて楽しいし内容の理解にも役立ってくれる。

そんなイラストにひとつでもある冒頭の手書き地図を見て、(伊藤正一さんが開いた)雲ノ平山荘はお隣に当たるのだな、と思っていたら、 伊藤正一さんや現オーナーの二朗さんについての記述も出てきた。別資本ではあるけれども今は山小屋同士協力し合うような体制もできつつあるそうだ。 山小屋同士が連携していれば登山者としても心強く感じることだろう。 

 自分は登山は全然しない人なのだが、本書を読んでちょっと黒部源流域に行ってみたくなった。 ということは、元々興味を持っていた人の中には本書を読んで実際に薬師沢小屋を訪れる人もいることだろう。 何せそれくらい黒部源流域の魅力が伝わってくる1冊なので。

 ところで本書、山と渓谷社から出てるのですが、著者のお名前(本名っぽい)は山と渓谷社の申し子みたいですよね。すごい。

黒部源流山小屋暮らし

山と溪谷社 2019年03月16日頃
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定本 黒部の山賊

山と溪谷社 2019年02月14日頃
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2022/01/23

服部文祥「ツンドラ・サバイバル」を読んだ



刊行(2015年)からそこそこ時間の経った本だが、今更ながらサバイバル登山家として知られる服部文祥氏の「ツンドラ・サバイバル」を読んだ。サバイバル登山とは極力食料を現地調達するスタイルの登山で、夏なら渓流釣り、冬なら猟をしながら登山をする。

本書はそんな著者の2010年から2013年にかけての国内でのサバイバル登山の記録と、2013年にNHK BSの番組、”地球アドベンチャー 冒険者たち「北極圏サバイバル ツンドラの果ての湖へ〜登山家 服部文祥〜」”にてロシアのツンドラ大平原をサバイバルスタイルで旅した際の記録をまとめたものである。

もともと服部文祥という存在もサバイバル登山家であることも知っていた。前述のNHKの番組も、たまたまではあるが放送時に観ていた。が、当時は「すごいなあ」と思いつつもそれほど興味は湧いていなかった。しかし、ここにきてあらためて興味が湧いてきたきっかけは以下のYouTube動画である。

服部氏が世界的クライマーである山野井泰史氏(服部氏の古くからの友人でもある)と共に新潟県の奇岩ガンガラシバナに登りに行くというものだが、道中で豊富に撮影されている野営模様が、ちょうどコロナ禍もあってキャンプを再開していた自分の琴線に触れた。息をするように野営している山屋の男たちは言うなれば高度なスキルを持ったキャンパーのようなものであり、俄然、服部氏の持つスキルやこれまでの経験に興味が湧いてきたのである。

そんなわけで読み始めた本書、やはり面白いのはタイトルにもなっているNHK番組の旅の記録である。番組は服部氏がツンドラの大平原をサバイバルスタイルで旅して隕石湖エル・ギギトギンに到達し、そこで幻の固有種イワナを釣って食べるというもの。道中、トナカイ遊牧民の1人(名前はミーシャ)と合流し、彼が獲ったカリブーを食料に目的地を目指す。

番組内ではミーシャの合流はチープな寸劇の末に決まっており、「どうせ仕込みなんだからガイドか何かとしてしなっと合流させればいいのに」と思っていたのだが、本書によると完全に偶然だったようだ。たまたま遊牧班の班長と揉めて干されていたため「一緒にエル・ギギトギンまで一緒に行かない?」「いいよ」という仕込みとしか思えないやり取りで合流することができたのである。むしろ仕込みじゃないからぎこちなくてチープに見えていたのか…。

果たして合流したミーシャはリアルにツンドラを生き抜くトナカイ遊牧民であり、そのサバイバルスキルはガチンコであった。サバイバル登山を提唱する服部氏のスキルはもちろん低くはないが、あくまで趣味の領域であり、目の前に現れた「ホンモノ」を畏敬の念を持って見る。ナイフ、猟銃の使い方、カリブーの動きの読み方、釣りの技術、獲物の捌き方、火起こし、炊事、ミーシャの多くのサバイバルスキルを観察し、自分のスキルとの共通点や相違点をレポートする筆致は本書の中でも一段と鋭い。

番組名にサバイバルを謳うものの、今回は普段のひとりで行うサバイバル登山とは違ってカメラマンやロシア人のコーディネーター、ポーターが同行しており、大名行列状態だったようだが、服部氏は明らかにこれら文明人たちよりミーシャに共感を覚えている。むしろ憧れのようなものを抱いてすらいたのではないかと思う。服部氏のサバイバル志向はおそらく日本で言うところのマタギや「黒部の山賊」的な人たちに憧れるところから来ているのではないかと思うのだが、ミーシャは正に現役のそういう人なのだ。

そんなミーシャとの旅もエル・ギギトギンに着いて佳境を迎える。サバイバルスタイルは自分ですべての装備を運ぶルールであるため、湖での釣りにはおもちゃのゴムボートを使わざるを得なかった(残念ながらオールだけはヘリで湖まで空輸した)こともあって大苦戦。番組を観ていてもゴムボートは今にも転覆しそうで危なっかしかったし、実際に沖に漕ぎ出せず苦労していたようだ。そんな中、何とか1匹の魚を釣り上げることに成功する。残念ながらお目当て固有種ではないがこれで最低限番組は成り立つなと一同ホッとした…ところからの逆転ホームラン。仕込んでいたんじゃないかと思うくらいドラマチックである。

他にも放送には登場しなかった話が盛りだくさんである。文明側ロシア人とミーシャの軋轢、早く帰りたい態度ありありのロシア人スタッフに毅然とした態度で対応するNHKディレクター氏、撮影完了して帰ろうとしたところで天候悪化して2週間ほど缶詰になった話などなど。惜しむらくは、今となっては読んだあと/読む前に番組を参照できない点だが、本書だけでも十分面白い。キャンプ、サバイバル、冒険、探検好きな方はぜひ手にとって読んでみて欲しい一冊である。

ちなみに服部氏は情熱大陸にも出演したことがある。その時はサバイバル登山中に滑落し重傷を負う模様が放送された。本書の前半、国内部分にはその時の話も詳しくレポートされている。その時のカメラマンが平出和也氏だったとは知らなかった。


サバイバル登山の記録ではなく、スキルだけをまとめた本もある。