2012/10/11

小出義雄 「マラソンは毎日走っても完走できない」



 ご存知、Qちゃん(高橋尚子選手)を筆頭に、世界選手権金メダルの鈴木博美選手、バルセロナ、アトランタのメダリスト有森裕子選手を育てた小出監督によるマラソン教本。走るだけの体型や足を持っていない人が歩くところから、最後はフルマラソンを走るまで、順を追って具体例をあげながら説明している。「褒めて育てる」人柄で有名な小出監督だが、本書でもそのテイストは健在であり、朗らかで簡潔な説明がなされている。

 タイトルにある「毎日走っても完走できない」というのは、単に走るだけではなく負荷をかける走りをしましょう、ということ。そのために主にはインターバル走を薦めている。インターバル走とは、ジョグ→全力走→ジョグ→全力走→ジョグ、のように一定のインターバルでペースを上げる走り方である。一時的に負荷を上げることでフルマラソンを走れるよう、足、心肺を鍛えていくのだ。他にもビルドアップ走やLSDの紹介もある。興味が有る方は別途調べられると良いと思う。

 また、レース直前のコンディショニングについての記載も面白かった。ポイントとなるのは3日前である。ここが最後に追い込みをかける日になるのだが(以降はジョグ中心)、ここでの負荷のかけ方で当日の戦術が決まるというのだ。強めの負荷をかけるとレース序盤で足が重くなる。しかし終盤で足が残った状態になるので、後半勝負の場合は強めの負荷をかける。逆に序盤で先頭集団に食いつく必要が有る場合は軽めの負荷にする。その時々のレース展開を予想して3日前の練習内容を決めるというのである。この辺りは鈴木博美選手や高橋尚子選手の具体例を出しながら説明していて非常に面白かった。

 その他、補強運動(筋トレ)や細かいところでは給水時のカップの持ち方など、ひと通りフルマラソンを走るための情報が記載されている。新書というパッケージングも相まって、情報が多過ぎないところも良い。本書を幹に、自分なりの走り方を工夫していきたい、というような方にオススメの一冊である。

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