2012/10/10

齋藤正明 「会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ」



 マグロの鮮度保持剤開発のため遠洋マグロ漁船に送り込まれた著者が、そこで学んだ知恵をまとめた本。タイトルが巧みで、マグロ船でどんなことがあったのだろう?どんなことを学んだのだろう?と想像力をかき立てられる。刊行から結構時間は過ぎているものの、ずっと気になっていた一冊だった。

 内容というか、実際に学んだ知恵はどんなことかというと、他人や自分に完璧を求めない、褒め方叱り方の工夫の仕方、など一般的な自己啓発本と大差無いもの。しかし、乗船何日目、こういう出来事があって、こう考え、こういうことを学んだ、とマグロ船での出来事をベースに書かれているところがユニークで面白い。読者にもたらす「知恵」としては凡庸かもしれないが、それをもたらす過程が面白く、タイトルの巧さと相まって書籍としてのパッケージングの妙味が光っている。

 さて、マグロ船と言われて思い浮かべるイメージは、体育会系で感覚的に仕事をしているイメージではないかと思う。しかし、著者の乗り込んだ東丸はそうではなかった。「叱る時は理由を説明する」など極めて論理的に仕事をしており、理詰めで著者に説教をしてくるのである。雑談を振られてそっけなく返事をする著者に、わざわざ「何故そっけない返事をしてはいけないか」まで説明して、コミュニケーションの方法を教えてくれるシーンもある。そう、海の男達は寡黙なようで、コミュニケーション力が高いのである。

 40日間ずっと同じ空間で生活するマグロ船は、社会人生活を凝縮したような環境である。ゆえに、その中でストレスレスに生きていくための多くの知恵に溢れているのだ。そういう意味で、内容的には若手の社会人の方が読むと良いのではないかと思う。ちなみに「会社人生で必要な知恵」を学んだ著者だが、今は独立している。

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