2021/05/02

テクニカル分析基礎の基礎を体系的に学べる / 和島英樹監修「株式売買で勝つための移動平均線の読み方」


株式投資をするにあたって「ファンダメンタルズで売買対象を決め、テクニカルで売買タイミングを決める」という人は多いのではないだろうか。

自分もそんな人間のひとりで、どちらかというとファンダメンタルズ重視で何となくテクニカルも使う形でこれまでやってきた。しかし、何となくはあくまで何となくでしかなく、結局、気分で決めるのと大差ないのでは?と感じることもしばしば。

そんな時、耳に入ってきたのが本書。「耳に入ってきた」というのは、監修の和島英樹氏の出演するPodcastを聴いていた際、番組内プレゼントも兼ねて紹介されたからだ。テーマを狭く絞っているところが面白そうだと思って買ってみたら思いほか良かった。

内容はタイトルのごとく移動平均線に絞られたもの。移動平均線とは何で、どういうことが分かり、実際にはどう使うのか、初心者でも分かるよう順を追って説明してあり体系的に移動平均線について学ぶことができる(最後にちょっとだけRSIやボリンジャーバンドもあり)。

これにより、それまで何となくだったチャートの分析が、ある程度筋道立てておこなえるようになった。もちろんそれが当たるとは限らないのだが、考え方自体を再現可能になったとでも言えばよいだろうか。はっきりとした考え方の軸ができたのだ。

テクニカル分析は科学的とは言い難い面もあり、半分くらいオカルトというか、市場参加者に対する心理学のようなところがある。だから「この場合は必ずこうなる」ということは無い。しかし、それまで50:50でエイヤと決めていたものが、セオリー通りいけばまだ上がりそうとか、ここで上げ止まる確率が高い、になることで失敗の確率を1割でも2割でも下げられれば御の字なのだ、と個人的には理解している。

失敗の確率を下げることはある意味コスト削減であり、長期で見ればパフォーマンスの向上に結びつく。(投資ではなくギャンブルの話で恐縮だが)AIを使って競馬で儲けるガチ勢は、全通りに近い馬券を買いつつその中から当たる確率が低いと思われるものを除いておくことで利益を出しているという。理論的には、除く馬券の割合が控除率を上回っていて、買った馬券の中に常に当たりが含まれていれば、資金はレースごとに少しずつ増えていくはず。

つまり、1発必中で当てに行くのではなく、ハズレ馬券のコストを削減することで利益を生んでいるのである。株式投資に関しても、失敗の確率を下げたり失敗しても傷を浅くするというコスト削減でパフォーマンスを上げることは可能だろう。そしてその手助けになるのがテクニカル分析なのだ。

移動平均線はシンプルで有用性も高いため、これを基本とし、その上で自分なりに拡張していくのがオーソドックスな方法だと思う。本書はその基礎を作るための第一歩として大変良い1冊である。

 

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