かつてテレ朝の「マグロに賭けた男たち(以下マグロ)」というドキュメンタリーが一世を風靡しました。大間(青森県)のマグロ一本釣り漁師を追ったドキュメンタリーですが、「Battle Fish」はそれのアメリカ版と言えるでしょう。アメリカ西海岸はオレゴン州のイワルコを拠点に大間のマグロよりは小ぶりなビンナガマグロ漁に挑む漁師たちのドキュメンタリーです。YouTubeにオフィシャルのトレーラーがあります。
だいたい2〜5人程度の人員(3人が1番メジャーっぽい)で1隻の船に乗り、1〜2週間ほど外洋に出て獲れるだけ獲って帰ってくるというのがオーソドックスなスタイル。とはいえ、登場する船は個性豊かでそれぞれの特色を活かして漁に臨みます。
家族代々の船に地元の悪友3人で乗り込むTNT号は最もオーソドックス。バツグンのチームワークでfour-letter wordを連発しながら手堅い漁を続けます。
JUDY・S号もオーソドックスですが、3人中1人は新人で未知数な能力に不安が残ります。昨オフに実施した大規模改修費用をいち早く回収したいという事情もあり。
OPPOR-TUNA-TY(opportunityにかけたジョーク)号はスズキの船外機を3機積んだスピードボート。その速力を活かしてすばやく漁場を移動し、他の船より多めの人員で一気に漁獲を挙げて日帰りで港に戻り、新鮮さで高単価を獲得するという異端の船です。周りからは金持ちの道楽とかスポーツフィッシングだとか罵られながらも新しいやり方に挑戦しています。
Ashley-Nicole号は陸軍出身の船長が率いる船。全体的に経験が浅く、他の船に比べるとまだまだと言った印象。
そしてIntrepid号。他の船は船長が船のオーナーですが、この船はオーナーは別(引退した老夫婦)におり船長は雇われ船長です。当初は2名の体制で、船も古いことから非常に低い運用コストを武器にマグロに挑みます。船長視点とオーナー視点、両方から漁を観られる点が興味深いところ。
それぞれの船がそれぞれのやり方でマグロに挑んでいる漁のシーンだけでもかなりグッときます。固定カメラの他、撮影クルーも船に乗って臨場感たっぷりの映像が繰り広げられます。さらに水中カメラでマグロが疑似餌に食い付くシーンも激写していたりとかなり迫力があります。そして日本の「マグロ」と決定的に違うのは、ナレーションがほぼ無いこと。現場の音と船員の声(時々別撮りしたインタビューも入る)、ちょっとしたSEだけで構成されています。「マグロ」はやたら浪花節的に煽ってくるナレーションがありましたが、個人的にはこちらの映像だけで迫ってくる感じが好みです。
さらに好みなのは学びが多くあること。3人程度の船とはいえ、そこには船長による小規模マネジメントが存在しています。新人の教育やらオペレーションのカイゼン、不足の事態に対する対処など。1、2週間狭い船内で一緒にいるわけですから、人間関係のマネジメントも大変です。上手くいっている船はトラブルがあっても、現実を受け入れてどう対処するかという考え方をするのに対し、上手くいっていない船はとにかく言い訳を探して何かのせいにしたがります。これはそのまま自分の仕事照らしてべからず集が作れそうだと思いました。また、シーズン中、何人か新人が登場しますが、ここにも上手くいく人/いかない人が出てきます。端的に言えばアドバイスを素直に聞けるかどうかに拠るのですが、口答えしている新人氏を観て「そんなことしたらアカンやろ〜」と思いながらも自分も似たようなことをしていないか不安になったりもしました。仕事に対する姿勢が学べますね。(^_^;)
もうひとつ面白いと思ったのはアメリカならではの文化(?)です。シーズン中何人かクビになる船員が出てきますが、その話題を船長なり他の船員なりが話す時はいつも、「いいやつなんだけど」が枕詞についていました。「いいやつなんだけど"YES"が言えないやつでね」とか「いいやつなんだけど船長とモメてね」という具合です。アメリカならではの建前フレーズになるほどと思いました。また、シーズン途中で登場する中途採用の船員が愛犬ごと船に乗り込んでいたのには驚きました。もちろんそのまま出漁です。日本で雇われ船員がペットごと乗船するってケースはなかなか無いんじゃないでしょうか。こういう文化的な差異がチラホラ観られるのも面白いところです。
というわけで、エンタメとして面白い上に多くの学びがある「Battle Fish」、大変素晴らしい番組です。興味を持たれたらぜひご覧になってみてください。
割と「会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ 」に通じるものがありました。
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