2011/03/27

狐崎晶雄・吉川庄一 「新核融合への挑戦 いよいよ核融合実験炉へ」

新・核融合への挑戦 (ブルーバックス)

核分裂と核融合
 未曾有の国難に際して、改めて原子力発電のあり方が問われている。現在の原子力発電では核分裂のエネルギーが使われているが、本書は同じ原子力でも核融合を取り扱うものである。核融合の原理からこれまでの取り組み、そして将来像を簡潔に述べている。ただし、2003年発行であるため一部の情報はやや古いかもしれない。目次は以下の通り。

1 超高温プラズマとは
2 電流ホール
3 核融合発電
4 磁場とプラズマ
5 プラズマの閉じ込め
6 衝突による粒子と熱の流れ(新古典理論)
7 プラズマの中の陽動による熱の流れ(乱流による熱輸送)
8 放射による熱の流れ
9 プラズマの加熱
10 プラズマ電流を流す
11 プラズマの計測
12 ダイバータと真空
13 断熱走
14 ステラレータ
15 慣性核融合(レーザー核融合)
16 核融合炉へ
17 国際協力とITER(国際熱核融合実験炉)計画
18 核融合発電の安全性
19 核融合炉の特殊な用途
20 未来への展望

核融合発電のしくみ
 核分裂による発電では、ウランなどの質量の大きい原子に中性子を当て、複数の原子と中性子に分裂する際に発生するエネルギーを利用して蒸気を発生させ、タービンを回して発電する。一方、核融合による発電では、重水素とトリチウムの原子核をぶつけて核融合を起こす。核融合により発生したヘリウムと中性子うち、中性子の持つ運動エネルギーを利用して蒸気を発生させ、タービンを回して発電する。熱源が違うこと以外、お湯を沸かしてタービンを回す点については火力発電所とも同じである。

研究のほとんどはプラズマ
 目次からも分かるように、現在の研究の主眼はプラズマにあるようだ。燃料を固めておけば自然と臨界を迎えてしまう核分裂と違って、核融合はとても発生させにくく、1億度超になって電離した原子核を高速でぶつける必要がある。単純に言えば、着火には1億度の熱源が必要ということだ。そんな高温を格納できる容器はないため、超高温のプラズマを真空中に磁場で浮かせて閉じ込めることとなる。この閉じ込める装置をいかに作るかがミソなのだ。本書では伝導、対流、輻射など様々な要因で失われる温度や安定性を、どのように克服しようとしているのかが分かりやすく説明されている。私自身は本書を読むまで、核融合の研究が、こんなにプラズマを安定させるための研究ばかりしているものとは知らなかった。

簡単に停止するので安全性は高い
 前述の通り、核融合はとても発生しにくい。温度が下がれば一気に反応は起きなくなるし、燃料が逐次投入であるためカットすることもできる。停止した後も燃料を冷やし続けなければならない核分裂とは比較にならないくらい安全だろう。核融合の燃料に使うトリチウムは微量の放射線を出す(紙一枚で遮断できる程度)が、リチウムから逐次作られて投入するため、放射性物質を燃料として保管する必要はない。ただ、核融合によって発生した中性子を利用する原理上、中性子を浴びた設備が一部、放射性物質化する問題はあるようだ。これについては、設備に使用する素材を工夫して、半減期の短いものを使うことで対応は可能とのこと。

実用化の見込みは早くて2030年
 現行の原子力発電より安全で、燃料の心配の少ない核融合発電であるが、実用化にはまだまだである。最新(と言っても2003年)の設備を使ってもプラズマは20秒しか維持できない。一度反応が始まれば、あとは核融合の熱で連続的に反応が進むのが理想であるが、現在はそこまで到達していない。核融合により発生するエネルギーよりも、核融合を発生させるために投入するエネルギーのほうが大きいのが現状だ。筆者によると、2050年実用化の計画を2030年に早められないか、との検討が行われているようだがそれでもかなり先の話だ。時間がかかるのは仕方がないが「核」という名がついているばかりに、核分裂と同列に扱われ、研究が萎んでしまうことは無いよう願いたい。

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